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うつ病の診断について

的確な治療を行うためには、適正な診断が必要です。

うつ病は、胃潰瘍や急性肝炎あるいは肺がんのような身体疾患と同じように診断を進めていくことができるのでしょうか。ここではこころの病気(精神疾患)を診断することの意味と診断に至る手続きについて、解説していきます。

  • なぜ診断することが大切なのか
  • うつ病などの精神疾患の診断方法とは
  • うつ病と診断する基準となるもの
  • うつ病と診断することの意義

なぜ診断することが大切なのか

診断が重要視されるのは、その診断結果によって治療手法が決定されるからです。たとえば、食欲低下や胸やけ、上腹部の痛みがあり受診した人が、胃癌であるか胃潰瘍であるかあるいは軽度の胃炎であるかの診断結果により、治療の仕方がまったくといっていいほど変わってくるでしょう。胃癌であれば外科的手術が優先されることになりますし、胃潰瘍や胃炎であれば薬物治療が中心になりますが、使用する薬剤の選択は胃潰瘍と胃炎では異なってきます。

また、胃癌でも病態の進行具合や癌細胞の病理所見、身体の衰弱度などを参考にして、どのような治療法が最適であるのかについて検討していかなければなりませんが、その検討についても診断結果に基づいて行われるのが常です。精神疾患では、外科的治療がなされることはありませんが、その診断によって薬物療法が優先されるのか心理療法を中心に治療していくのかなどの治療技法の選択がなされ、薬物療法を行うにしても疾患別に選択する薬物の種類や投与量が異なるのが通常です。

このように医学では、的確な治療を行い、治療効果をあげるために、適正な診断をしていくことが必須なのです。

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うつ病などの精神疾患の診断方法とは

このように診断が重要であることに変わりはありませんが、うつ病などの精神疾患と身体疾患では、その診断に至る手続きが少し異なります。

まず、症状についての詳細な聴取(いわゆる問診)は、身体疾患においても精神疾患においても重要です。特に身体疾患では、食欲低下、胸やけ、上腹部痛などの症状の経過や程度を聞きだすことにより、どのような検査が必要であるのかについて、検討する大切な資料となります。そして、実際に血液検査や検便、食道胃十二指腸造影、内視鏡検査などを実施することによって、客観的に病態の有り様を把握することができます。

一方、うつ病などの精神疾患に関しては、脳波や頭部の画像検査(CTやMRI)が必要なこともあれば、不要と判断することもあります。脳という身体についての検査が必要な場合もありますが、そのような検査を行っても異常がみいだせないような症状を呈していることも多く、その場合には適切な検査によって病態を客観的に把握するという手段をもてないということになります。 うつ状態にある患者でも、時に脳腫瘍や内分泌疾患、認知症などを疑い、検査が必要な事例もありますが、身体的な検査を必要としない場合の方が圧倒的に多いのです。 

それでは、検査を行うことによって客観的に異常を証明する手段をみいだせない精神疾患に対して、どのように診断を進め、治療方法を決定していくのでしょうか。それは、面接によって詳細に症状を把握するとともに、行動や素振り、表情についても評価し、周囲の人(家族や職場、学校の関係者など)からも情報を得て、それらの所見を総合的に評価することにより、診断を進めていく以外に方法はありません。その患者が陥っている状況、困っている症状をできるだけ詳しくまたリアルに精神科医が把握できることが、その患者を診断するのにもっとも必要なことなのです。

うつ病の診断は、さまざまな症状の存在やその経過についてきっちりと把握することから導き出されるもので、それが規定されたうつ病の診断基準、あるいはその概念に一致することで決定されるものです。この際、身体疾患のように客観的な検査所見がその診断に応用できるわけではありません。診断に至る根拠は、あくまで面接によって得られる状態や症状の把握であり、それによって得られた所見が、既存の概念や基準と照合した際に、一致することで診断を確定していくのです。

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うつ病と診断する基準となるもの

精神疾患を診断するための既存の概念や基準についてですが、米国精神医学会が作成したDSM−Ⅳ−TRとWHO(世界保健機関)が作成したICD−10が、現在の日本で幅広く使用されるようになっています。その診断基準の実際については、特に記載の必要がないと思いますので、興味のある方は専門書を調べてください。

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うつ病と診断することの意義

さて、現代の精神医学では、DSM-Ⅳ-TRやICD-10の診断基準を用いて、うつ病に該当する症状の特徴やその持続期間を評価し、その基準に当てはめることでうつ病と診断するのは、さほど難しくないのかもしれません。そして、うつ病と診断できることで大まかな治療方法、対処方法は規定することができますが、一方でその事例独自の個別性についても、目を向けていかなければならないでしょう。

近年、うつ病はその背景となる性格特徴や誘因についてもさまざまなものがみられ、うつ病理解の難しさは、診断の困難さにあるというよりは、診断することのみで方針が一定化できない、この疾患の多様性にあるといっても過言ではありません。

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